2008年1月26日土曜日

変体漢文

絵巻の楽しまれ方を探っている(1月9日の投稿)。そのために、変体漢文による資料、とりわけ室町時代の日記をすこしずつ読んでいる。

「変体漢文」。この言葉自体はあまりにも随意的なニュアンスがあって、おそらくどうしても気に入らない人も多いのではなかろうかと思う。あれこれと代わりの用語も模索されているもようだが、いまだにこれが一番分かりやすい。中世の実用的な文献、たとえば日記、手紙、契約書などは、たいていこれによって記されている。あえていえば、和歌や漢詩といった、気取った文学行為や公式行事を除いて、人々の生活の中の文字活動の大半を占めたのがこの文体によるものだった。

いうまでもなく、「変体」とは、異常を意味する「変わったもの」ではなく、あくまでも正規な漢文表記のルールに従わない、漢文から変化し、漢文と異なったということを指す。その結果、文章はほぼすべて漢字によって記されるが、漢文ではない。そのような文章を理解するためには、したがって漢文ではなくて、当時の日本語の知識が必要だ。表記には読み方を指示する仮名がほぼ皆無なだけに、日本語力が余計に大事となる。

一方では、このような変体漢文を読み始める初心者にとっては、読解知識を習得する環境はけっしていいとは言えない。古典の日本語についての知識があってはじめて読者との資格があるといった暗黙の前提からだろうか、変体漢文を文法的に説明する入門書はいまだ知らない。古文書の語彙、ひいては文章の書式を取り扱う辞書はかなりの数の種類があるのに、それの付録として格好のテーマと思われる文法要綱みたいなものには、いまだ出会っていない。こう言う筆者もあくまでも初心者なので、このブログを読んでいる読者、そのような資料の存在をご存じの方、ぜひ教えてください。

これを書いている最中に、数年前に試みた「インターネット古文講座」に対して一通のメールがモスクワから届いた。一つの練習問題の間違いを指摘したものだ。さっそくそれを訂正し、この場でお礼を言いたい。

インターネット古文講座

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