2009年1月3日土曜日

カウボーイの町より

丑年を迎えた。今年は、約百年ぶりの、カナダ全土にわたる「白いクリスマス」だと言われ、わたしのホームタウンも、すでに三週間以上、深い雪に包まれ、マイナス20度以下の厳しい冬が続いている。暖かい室内に留まりがちの、のんびりしたお正月となった。

思えば、牛と人間との付き合いが長い。絵巻画面に描かれたそれを思い出してみても、農耕生活のパートナーとしての牛、重い荷物をひっしに引っ張る原動力の牛、そして王朝貴人の象徴である牛車とともに、時には過剰に飾り付けられた牛、じつに枚挙に暇ない。一方では、おとなしい牛でも、いつでもどこでも人畜無害な存在というわけでもなかった。はるばる天竺の国より渡ってきて、地獄の中を繰り返し顔を見せてくれたのは、あの牛頭(ごづ)だ。人間に順応していながらも、その圧倒的に大きな体ゆえに、いやでも脅威を感じさせていたからだろう。

そのような牛だが、意外なほどに主人公にはあまりならなかった。わずかな例外をあげてみれば、日本の「駿牛図(すんぎゅうず)」、「国牛十図」、そして禅の教えを説いて、中国でも日本でも語り継がれた「十牛図」ぐらいだろうか。

わたしの住んでいる町は、カウボーイの伝統を自慢にしている。市内のあっちこっちの道路などの地名が牛ゆかりのものが用いられている。そればかりではなく、生きた牛が日増しに目の届く日常生活から姿を消えていくことに由来するだろうが、ダウンタウンや空港のあっちこっちに牛の彫像を設置して、一つの風物となった。それらの彫像は、さまざまな色や姿にデザインされている。写真のような場合、体を開いた絵巻に見立てたのではないかと目を疑う。素朴な絵の連続から、ついなにかのストーリが隠されているのではないかと、読み始める。

丑、牛、うし、カウ。今年も素晴らしい一年であるように。

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