2012年11月3日土曜日

画像記憶

01aa現在進行中のクラスからの話題を一つ記しておく。二週間一度に一頁程度のクイズを書かせている。授業内容への理解を確認し、学生たちに自分の進め具合を把握してもらいたいというのが基本の狙いである。先週のそれには、最後の一問に、クラスでは違う日に併せて三回も見せたあの神護寺蔵の頼朝像を小さく出して、像主の名前を書かせた。鎌倉時代がテーマなので、頼朝という名前は覚えておいたはずだ。クイズの紙面にすこしでもめりはりをつけようとおまけのつもりだったが、結局は半分以上の学生を悩ませる難問となってしまった。

これまでのクラスで、肖像画を五、六点見せておいた。とことん混乱させたところまではとてもやっていない。見せる側の予想から言えば、公家装束か僧侶の格好なのか、画像内容があまりにも離れていて、いたって簡単に見分けがつくはずだとばかり考えていた。しかしながらどうやらそこには思わぬ落とし穴があった。あまりにも予備知識が少なく、そのような質問も予想していなかったがために、初心者の目にはむしろ新鮮な情報が氾濫し、対応しきれないでいたらしい。しかも、ビジュアルの内容が対象となれば、どうやらまったく違う記憶の能力が要求される。そのような用意をして取りかからないと、意外と記憶になにも残らないという結果になってしまう。

記憶の仕方に関わる課題ならば、それだけに訓練によってその効果が飛躍的に向上されるものである。言い換えれば、その気になれば、もうすこし紛らわしい内容でもきちんと見分けることが出来る。はたしてクイズの後のクラスで、今度は義満の肖像を見せたら、クラスに俄然ささやかな緊張が走った。同じ質問をしても芸がないから今度のクイズではもう聞かないよと、さっそく冗談半分に雰囲気修正に乗り出した。

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