2015年12月12日土曜日

想像力

今週のはじめに、今学期の講義が終了した。ここ数日の主な仕事は、学生たちのレポートを採点することだ。二、三年まえから、想像力を働かせて自由な創作作品を出してもよいとの要求を出して、それ以来、自由創作に走る学生の割合は年々増えてきた。今年になると、はじめて大人数のクラスにななったのに、レポート読みにはまったく倦怠感がなく、つぎのファイルを開けることが楽しくてならないような瞬間はいくつもあった。自分ながらびっくりした経験だった。

若い学生たちの作品の魅力は、一言で言うと、その自由な想像力。日本語の勉強も半分以上の人がまったくしていない中、言語や背景の時代考証やら、人物の間の隠された関係やらを期待すれば、間違いなくハズレだろう。しかしながら、そのような考えにさえ捕らわれなければ、若ものの遠慮がない、たくましい空想には、ときには唸るばかりだった。わずかな知識を駆使し、それをうまい具合に継ぎ合わせたりする工夫は、まさに見事。壇ノ浦の海に消えた魂がイザナギに救われるとか、信長殺害に秀吉が酒呑童子を走らせたとか、数え出したらきりがない。マルチメディアの部では、オリジナル描き語りをビデオ動画に作成したのに、どれだけの時間を掛けたか計り知らない。クラスで一度だけちらっと触れた、あの餅搗きの三巨人の錦絵は、なんと十ページもの大作マンガに生まれ変わった。調べればきっとまっさきに出てくるだろう信長の辞世の句を、わざわざダジャレに書き換えたところなど、わけの分からない洒落、場合によってはナンセンスな笑い取りは、なぜか朗らかで、心地良い。

レポートの中から優秀作を選んで、いずれ「Old Japan Redux」の続きを作りたい。いささか笑いに走りすぎたものは、割愛するほかはなかろう。ただ極端なものがなくても、学生たちのありかたの一端を映し出すことに十分だ。出来上がったら、あらためてここに記す。

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